日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-88
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江戸時代の料理書にみる里芋料理
*三宅 紀子寺田 絢香
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抄録

【目的】里芋は、日本に伝わったのは縄文時代の後期から弥生時代の初期頃と言われている。水田稲作以前から栽培されていたことから、主食として食べられていた。また、儀礼や祭りの際の食材としても用いられ、日本各地の文化とも強く結びついてきた。しかしながら、近年その生産量、消費量ともに減少しており、後から日本に伝わったじゃがいも、さつまいもに比較して食する頻度が低いいも類となっている。本研究では、江戸時代の里芋を用いた料理の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】『翻刻江戸時代料理本集成』(臨川書店)に所収の江戸時代の17種の料理書を資料として用いた。里芋を用いた料理は72件記載されており、その調理法、里芋以外の材料、里芋の利用部位などについて調査した。

【結果・考察】里芋の利用部位は、芋の部分がほとんどであったが、茎(ずいき)を用いた料理が4件、葉を用いた料理が1件あった。また、子芋だけでなく、親芋の利用も見られた。調理法を分類したところ、煮物(全件数の37%)、汁物(同28%)、あえ物・浸し物・酢の物(同10%)、焼き物(同8%)、ご飯物(同7%)であった。里芋以外の材料については、野菜類(全件数の30%)、いも類及びでんぷん類(同27%)、きのこ類(同23%)、香辛料(同22%)であった。あんかけやくず煮などくず粉を用いた料理が多く見られ、野菜やきのこなどとの組み合わせがほとんどであったが、鴨や雁などの肉類を用いた料理もあった。里芋は、現在ではほとんど見られない、あえ物・浸し物や焼き物などの料理にも用いられており、多様な里芋料理があったことがわかった。

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