日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-3
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ポスター発表
下水汚泥焼却灰から回収したリン系肥料で栽培したサツマイモの成分特性と乾燥粉末の利用法の検討
*山口 智子柳澤 希衣大竹 憲邦金 煕濬
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抄録

【目的】植物栽培の必須元素であるリンは枯渇資源の一つであり、日本ではすべて海外からの輸入に頼っている。演者らはこれまでに下水汚泥焼却灰からリンを回収し活用する方法を確立し、リン循環型社会の実現に向けた検討を行っている。本研究では、回収リンを肥料として栽培したサツマイモについて、生芋の成分特性を評価するとともに、サツマイモの加工利用法の検討のため、異なる乾燥温度による成分特性の違いを明らかにすることを目的とした。さらに、乾燥粉末を使用したクッキーの嗜好性を調べた。

【方法】2021年6~10月に新潟大学農学部圃場にて、サツマイモ(ベニアズマ)を慣行区は硫安(5 kg/10a)、塩化加里(20 kg/10a)および過リン酸石灰(15 kg/10a)を施肥し、対象区はリンを回収リン(10 kg/10a)に変え栽培した。収穫後、水分含量、Brix糖度、クロロゲン酸量、総ポリフェノール量、抗酸化性を測定した。さらに、75~95℃で乾燥させた粉末について同様の測定を行うとともに、乾燥粉末の添加量の異なるクッキーを作製し、官能評価を行った。

【結果・考察】対象区のサツマイモは慣行区よりBrix糖度が有意に高値を示したが、その他の成分特性に違いはみられず、回収リンを用いた場合でも同等に栽培できることがわかった。乾燥粉末では75℃乾燥のBrix糖度、総ポリフェノール量、抗酸化性が最も高かった。乾燥粉末を40%添加したクッキーにおいて、サツマイモの風味をより感じられると評価されたが、20%添加クッキーの方が外観や硬さ、口当たりの評価が高く好まれた。回収リンで栽培したサツマイモの利用法を提案できたことは、リン循環型の持続可能な社会を築く一助になると考える。

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