【目的】粳米粉に重量比2~8倍の水を加えて調製した粳米粉ゲルの性状は,加水比と保存日数により影響を受けた。加水比4倍以上のゲルでは離水を観察したことから本報ではショ糖を添加し,ショ糖量と保存日数が粳米粉ゲルの性状に及ぼす影響を検討した。
【方法】ゲルの調製は,粳米粉に加水比4倍に,米粉重量の0,50,100,150,200%のショ糖を加えて耐熱袋に入れ,スチームコンベクションオーブンで加熱した。成形器に流し入れ10℃で保存した。保存1,3,5日後のテクスチャー測定における硬さと付着性,水分活性,保存1日後の動的粘弾性と離水量を測定した。ゲルと同じ配合割合の試料をDSCで昇温測定した後,10℃で21日間保存し,再昇温測定を行った。
【結果・考察】ショ糖量の影響は,100%未満では0%ゲルよりショ糖の親水性により米粉ゲルの自由水が減少して硬くなり,150%以上では0%ゲルよりゲル構造の網目間にある溶液の粘度が増して,架橋が疎となり軟らかくなったと推察した。 動的粘弾性は全ての試料で貯蔵弾性率(G’)>損失弾性率(G’’)を示した。ショ糖量の増加に伴い付着性と離水量,水分活性は低下した。DSCによる昇温測定では糊化ピークが出現し,ショ糖量の増加に伴い糊化開始温度(To),糊化ピーク温度(Tp),糊化終了温度(Tc)は高温側にシフトし,エンタルピー量(⊿H)が大きくなった。 保存の影響は,全てのショ糖量のゲルにおいて,硬さは保存5日間では差が小さく,付着性は3日後に低くなり,水分活性は有意差がなかった。保存21日後のDSC再昇温測定ではTo,Tp,Tcが昇温測定時よりも高温側にシフトして,⊿Hが小さくなり,老化の抑制が推察された。