日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-12
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ポスター発表
大麦粉の品種・搗精及び製粉条件の相違が及ぼす天ぷらの品質への影響
*谷口 明日香藤本 ゆりか三上 詩織伴 雄介加藤 啓太池田 達哉伊藤 美環子小林 理恵
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抄録

【目的】既報にて、大麦粉を用いた天ぷら衣は天ぷららしい歯もろさを有し、嗜好性が高いことを報告した。しかし、現在流通する大麦粉は品種や搗精歩合、製粉方法等が商品ごとに異なるため、大麦粉自体の特徴も異なる。本研究では、品種や搗精及び製粉条件を変えた大麦粉を調製し、その天ぷらの品質を比較することでこれらの相違が及ぼす影響を明らかにした。

【方法】試料には品種、搗精及び製粉条件が異なる大麦粉7種に加え、対照として薄力小麦粉を用いた。これらの理化学特性を評価した上で既報に準じて揚げ衣試料を調製し、色、破断強度、水分飛散率及び吸油率を測定した。また、試料粉でさつまいも天ぷらを調製し、色、におい、食感、油っぽさ、衣の付き具合、総合評価について評点法による嗜好型官能評価を行った。

【結果・考察】各種大麦粉は試料間で粒度、β-グルカン含量、灰分含量が異なった。これらの揚げ衣は褐色を帯び、特に搗精度が高く灰分含量が多い大麦粉は濃い色を呈したが、色の嗜好性に相違はなかった。その他の揚げ衣の評価項目では試料間の差は小さかった。いずれの大麦粉も小麦粉よりも揚げ衣の水分飛散率及び吸油率が有意に高く、揚げ加熱中の水と油の交代が進みやすかった。また、破断特性値からは大麦粉は小麦粉よりも歯もろさを有意に感じやすいことが示唆された。これは官能評価にも反映されており、いずれの項目も評価点が高く、中でも一部の大麦粉の食感は小麦粉よりも有意に好まれた。以上より、本試料間の特性の相違は天ぷらの嗜好性に影響せず、いずれの大麦粉でも嗜好性の高い天ぷらを調製できるといえる。特別な操作を要さず水と粉のみの生地にて容易に食感の良い衣が仕上がる点は、大麦粉を用いる利点であると考える。

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