日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1B-4
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口頭発表
伝統食品「くろこ」製造における歩留まりの推計とくろこ調理品の開発
*髙橋 雅子村松 芳多子阿部 雅子堀口 恵子綾部 園子
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抄録

【目的】「くろこ」は,群馬県嬬恋村の伝統的な保存食品で,じゃがいもをすりおろしてデンプンを分離した際の搾りかすを,冬季に屋外で半年間保蔵した後,洗浄,乾燥させて製造する。製品は加水後加熱して食される。これまで経験的に製造され,製造過程における変化については不明な点が多い。本研究ではくろこの製造過程における量的変化を把握するとともに,くろこを用いた新しい調理品を開発して,その嗜好性について検討した。

【方法】じゃがいもは,すりおろしてネットに入れ水中でもみ洗いし絞りかす(くろこの素,「素」)を得た。沈殿物は水替えを繰り返して,片栗粉(最下層)と一番くろこ(その上層)を分離した。嬬恋村で半年間保蔵した素を水中でもみ洗いして乾燥させ二番くろこを得た。各段階の質量を測定し原料いもからの歩留まりを推計した。さらに,二番くろこを使用したフランスパンとクッキーのレシピを開発し,5段階評点法で香り,硬さ,食感,味,総合的な好ましさを評価し,嗜好意欲尺度法で受容度を評価した。パネルは本学学生(男女)64名とした。

【結果・考察】デンプン(片栗粉(乾物)),一番くろこ(乾物),素(生)の回収率はそれぞれ約10,1,35%であった。保蔵後の素から質量で約25%の二番くろこ(乾物)を得たが,保蔵期間に伴う素の水分減少を考慮すると,生じゃがいもから製造される二番くろこの歩留まりは約5%と推計された。調理品の官能評価では,クッキーの食感は無添加に対し有意に高く評価された。受容度は,フランスパンとクッキーのいずれもくろこ添加の有無による有意な差はなかった。以上より,くろこを小麦粉の10~30%程度置換した場合には,嗜好性の高い調理品となることが示唆された。

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