日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1B-5
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口頭発表
油ハネ抑制に関する研究
*石田 弘樹
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抄録

【目的】から揚げを始めとした揚げ物料理は市場調査において常に好きな食べ物の上位に入っており,家庭内での出現頻度も非常に高い。一方で揚げ物調理時の不満点として,調理後のコンロ周りやキッチンの油汚れが挙げられ,後片付けの面倒さから,家庭内の揚げ物調理を敬遠する家庭もある。そこで,家庭内での家事負荷低減を目的に油ハネ抑制を軸とした機能油脂の研究を行った。

【方法】水とのなじみが良い乳化剤を菜種油に溶解した油脂を用い,油ハネしやすい揚げ物(イカ天)の調理を行った。イカ天は冷凍イカを解凍後,縦横2~3 cm程度,厚さ1 cm程度の大きさのイカ10個を55 g±1 gに揃え,規定量の水で溶いた黄金の天ぷら粉(昭和産業社製)を付けた試料を用意した。フッ素樹脂加工フライパン(φ28 cm)に油脂(300 g or 600 g)を入れ,調理器の周りに紙を敷き,IH調理器(火力:7(強火))にて油脂温度が185℃に達した時点で試料を投入し,片面1分30秒ずつ加熱した。調理後の油ハネの面積及び油ハネ重量を測定した。なおコントロールは乳化剤無添加品の菜種油とした。

【結果】油ハネ抑制評価を実施した結果,油量300 g同士にて比較した結果,油ハネ面積比較では48.1%低減,油ハネ重量比較では65.1%低減(重量)を確認した。油量600 g同士でも,同様の傾向であった(47.5%低減(面積),61.6%低減(重量))。 以上の結果から,油ハネ面積・重量共に水なじみの良い乳化剤を加えたことで油ハネを抑制できることを確認した。本効果は乳化剤を配合したことで試料中の水分(水滴)と油のなじみが良くなり(界面張力が低下したことで),小さい水滴の状態で油中に分散されるため,水滴から発生する水蒸気も小さくなり,油ハネを抑制したと推察された。

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