日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1B-6
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口頭発表
包丁操作の慣性センサーの記録からの動作の再現
—6軸モーションセンサーの数値記録に基づく動作の再現—
*由良 亮萩原 勇人楠瀬 千春
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抄録

【目的】私たちの研究チームでは包丁動作をモデルとして慣性センサーを利用した,操作記録の取得と解析を行なってきた。しかし,この操作記録は運動解析を妨げる信号が含まれる。

一つは,包丁の動作特徴に由来する突発的なノイズ,もう一つが重力方向の加速度に由来するバイアスである。突発ノイズの原因は,切断対象物やまな板に刃が接触することによって起こる急減速である。この急減速は,一般的な包丁運動に由来する信号(<±1 g) に比べ非常に短く(0.10~0.025秒)大きい (> 8 g)ピーク信号として検出される。一方,重力ベクトルは多様に変化する包丁操作に伴い,方向が目まぐるしく変化する。そこで,元の記録からこれらの妨害信号を取り除くことで,包丁運動を仮想空間上に再現することを試みた。

【方法】あらかじめ操作を固定した包丁操作データを用い,複数のデジタルフィルター(指数平滑・カルマン・メジアン・移動平均・ガウス)について設定パラメータを組み合わせた上で,妨害要因となる信号の除去を試みた。そこから姿勢・位置に関する情報を算出した。それを 3Dの包丁モデルに適用し,3Dアニメーション用フォーマットであるglTFファイルとして出力した。

【結果】突発ノイズは,カルマンフィルタが有効に働き,角速度・加速度ともに除去することができた。また重力ベクトルに由来するバイアスは,前方200点(1秒間)のデータを用いたメジアンフィルタが有効に働いた。これを元に,角速度・加速度データを相補的に利用し,重力ベクトルを元に補正を行う相補フィルタを適用したところ,短時間ではあるが記録動作に近づけることができた。

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