日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1B-7
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口頭発表
茶道における抹茶撹拌の動作解析
*洲戸 歩白杉(片岡) 直子本多 佐知子祗園 景子増田 勇人大村 直人
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抄録

【目的】茶道における抹茶の点て方やその仕上がりには,熟練者と非熟練者の間では明確な差がある。この差は熟練者が持つ,長年の経験や勘などから得た,簡単には言語化できない暗黙知によるものだと考えられる。本研究では,被験者のなかでも特に仕上がりの良い熟練者に焦点を当て,その熟練者に特有の撹拌動作を分析し,化学工学の視点から抹茶の撹拌に有効な動作の抽出を試みた。

【方法】抹茶2 gを入れた内径10.5 cmの茶碗に80℃の湯70 mLを注ぎ,4名の熟練者に撹拌させた。その様子を正面から動画撮影し,Dipp-Motion V(DITECT社製Ver.1.2.6)を用いて,被験者に取り付けたマーカーの変位の時系列データを取得し,動作解析を行った。動作解析後のデータと,撮影した動画から抹茶撹拌に有効な動作を抽出した。撹拌後の抹茶表面の泡の細かさを仕上がりの1つの評価指標とし,茶碗の真上から撮った写真をImage J (ver.1.53o)を用いて表面の泡の部分をモノクロ二値化して,黒色で示される部分の面積を測定することで行った。

【結果・考察】熟練者同士の動作解析データより,抹茶の仕上がりが良かった被験者Aは初期段階での1秒間あたりの撹拌回数が8 回程度であり,他の被験者の1秒間あたりの撹拌回数よりも多かった。この結果より,被験者Aは他の被験者と比較して抹茶の泡を細かく立てることができたと推測できる。また,被験者A以外のマーカーの変位の時系列データは,どの撹拌時刻においても一定の周期性をもつ波形を示したが,被験者Aは経時変化とともに複雑な波形を描いた。これは,抹茶の仕上がりに対して被験者Aが特異的な撹拌を行ったためであると考えられる。

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