日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1C-1
会議情報

口頭発表
戦国期毛利氏に関わる饗応献立の再現と考察
—『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された器を適応して—
*渡壁 奈央藤井 歌穂北尾 美樹宇田川 心優古田 歩鈴木 麻希杉山 寿美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】我々は戦国期毛利氏と大内氏の饗応献立が記された『元就公山口御下向之節饗応次第』(1549年:以下『饗応次第』)に基づいて料理再現を行い,その献立構成を報告してきた。本研究は,戦国期毛利氏に関わる他の複数の饗応の料理を再現・比較検討し,その特徴を明らかとすることを目的とした。

【方法】対象史料は,『饗応次第』と同様に,地方の武士の間で相互に行われた饗応『益田藤兼・同元祥安藝吉田一献手組注文』(1568年:毛利氏と益田氏),地方の武士が国の権力者をもてなした一方向の饗応『明応九年三月五日将軍御成雑掌注文』(1500年:大内氏から足利氏へ,以下『将軍御成』),および『輝元様聚楽御亭江秀吉公御成記』(1590年:毛利氏から豊臣氏へ,以下『秀吉公御成』)とした。これらの饗応献立の再現には『饗応次第』に記された器や膳を適応させた。

【結果】饗応の膳部では,いずれも本膳には飯と菜7つ,二の膳以降には汁2つと菜5つ(あるいは3つ),汁1つと菜2つが配置されていた。『将軍御成』の三の膳では,左の汁の位置に“御わけの供御”が“御ゆ土器重”とともに供されていた。この配膳の形は『山内料理書』には記されていたが,他の饗応では認められなかった。献部では,いずれの饗応でも初献では“ざうに”が供され,二献以降は点心と御副物からなる献,菜3つからなる献から構成されていた。『将軍御成』の献数は25献と多く,点心として麦,まんぢう,5種の羹が供されていた。『将軍御成』,『秀吉公御成』のその他の献で供された菜は,『饗応次第』の菜と類似していた。以上より,戦国期毛利氏に関わる饗応にはその性質により,いくつかの違いがあるものの,規則性が維持されていたことが明らかとなった。

著者関連情報
© 2023 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top