日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1C-7
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口頭発表
福島市における郷土料理の喫食実態の世代間比較について
*阿部 優子會田 久仁子中村 恵子
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抄録

【目的】日本調理科学会「家庭料理研究」では,福島県内の郷土料理について調理担当者である主としてシニア世代を対象に聞き書き調査を実施したが,その他の世代の食べ方や考え方は不明であった。そこで,本研究では福島市に居住する若者から高齢者までの郷土料理の喫食実態等を調査し比較することで,郷土料理を伝え継ぐための課題を明らかにすることを目的とした。

【方法】福島市内の高校生,小学生の子を持つ保護者およびシニア世代を対象に,無記名の自記式質問紙法およびGoogleフォーム(質問紙と同内容)でのアンケート調査を2021年5月~2022年9月に実施した。質問項目は,基本属性,福島県の代表的な郷土料理24品の認知度や喫食経験,調理可否等についてである。回答の得られた516名(回収率36.7%)について集計し,一元配置分散分析あるいはt検定を行った。

【結果】福島県の郷土料理で最も認知度の高かった料理は県北地方の「いかにんじん」だった。「知っている」と認知した割合が50%以上を示した料理数は高校生で24品中6品,子育て世代は同17品,シニア世代は同20品であり,郷土料理の認知度,喫食頻度,調理可の値は世代が上がるにつれて高い割合を示した。「いかにんじん」「ひきないり」等は他地域の料理よりも認知度,喫食頻度,調理可の値は高く,特にシニア世代で顕著だった。調理できるとした回答した者は,「ひきないり」等を普段のおかずとして,「いかにんじん」等を正月やお盆等の季節の行事食として作っていた。また,調理できるが作らない者は,その理由を「作る手間が面倒」と捉えており,特に「ちまき」は今後の伝承が危惧された。郷土料理の伝承には,若い世代における認知度の向上と,調理工程の簡素化が課題と考えられた。

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