日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1D-2
会議情報

口頭発表
生醤油の大豆たんぱく質に対する影響
*安藤 真美北尾 悟野原 綾平原 嘉親篠崎 洋平
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】生醤油は火入れを行っていないため鮮やかな色や穏やかな香りだけでなく,たんぱく質や澱粉分解系の酵素活性が残存する特徴がある。これまでの研究において,米や魚などの調理中における生醤油の食材への影響について検討し,生醤油に含まれる各種酵素による影響を報告した1, 2)。今回は,近年植物性たんぱく質供給源として注目度が上昇している大豆たんぱく質に対する生醤油の影響についてモデル実験を行い,新たな加工食品への生醤油活用の可能性を検討することを目的とした。

【方法】醤油は,キッコーマン製こいくち生醤油を使用し,大豆たんぱく質は不二製油(株)より提供の粒状大豆たんぱく質および粉末状大豆たんぱく質を使用した。大豆たんぱく質0.1 gに対して0.1%,1%,10%濃度(v/v)の生醤油を加え,30℃で保温処理し,ローリー法によるペプチドを含むたんぱく質量,SDS-PAGEによるたんぱく質組成,ポストカラムを用いたHPLCによる遊離アミノ酸量,および遊離糖量を検討した。

【結果】ペプチドを含むたんぱく質量,遊離アミノ酸量は,生醤油の濃度および反応時間に依存して増加した。たんぱく質組成の結果,生醤油の濃度および反応時間に依存して72 KDa付近のバンドがうすくなり,低分子である11-17 Kda付近に新たなバンドが認められた。生醤油に含まれるプロテアーゼにより大豆たんぱく質が分解され低分子化したと推察された。以上の結果から大豆たんぱく質に生醤油を用いた場合,新たな食感や各種分解産物による機能性を有する加工品ができる可能性が示唆された。

1)安藤等,日本調理科学会誌,53(3),207-215,2020

2)Ando et. al.Journal of Food Research,11(1),10-22,2022

著者関連情報
© 2023 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top