会議名: 2023年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: 県立広島大学
開催日: 2023/09/09 - 2023/09/10
【目的】かつお節は,脂質として多価不飽和脂肪酸を多く含むため酸化されやすく,それに伴うオフフレーバーが生成する。近年食嗜好の変化により,必ずしもその酸化分解物の香りがオフフレーバーであるとは限らない可能性も考えられる。本研究では,かつお節粉の保存がかつおだしの風味に与える影響を調べることを目的とし,特に香気成分に着目して調べた。
【方法】かつお節粉を3温度帯及び5保存期間で保存したものを試料とした。各試料からかつおだしを調製後,HS-SPME法で香気成分を抽出しGC-MS によって測定を行った。検出された成分ピークについて多変量解析により,かつお節粉の保存条件のかつおだし香気組成への関与について調べた。次に,7種の不飽和脂肪酸標準品について窒素充填袋内で0.4%-AIBN-アセトニトリル溶液系で脂肪酸酸化促進を行い,酸化前及び酸化後についてGC-MS分析を行った。
【結果】かつおだしのGC-MSでは,保存1週間後では保存温度(24℃~44℃)が高くなるほど組成の違いがみられたが,保存2週間後以降では,保存温度帯関係なく保存0日と判別された。3温度帯(24℃,34℃,44℃)での経時的変化を見ると,24℃,34℃保存では0日~1か月の間で組成変化が見られたが,44℃保存では,保存1週間以降は差がないことが分かった。これらの組成変化の寄与成分は主に脂肪酸酸化由来成分と考えられ,かつお節粉の酸化がかつおだしの風味にも影響を与えることが分かった。次に,不飽和脂肪酸標準品の自動酸化では,増加した揮発性化合物は約50種が推定された。n-3系及びn-6系不飽和脂肪酸で生成成分は異なり,そのいくつかはかつおだしとも関係する成分であった。