日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1D-6
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口頭発表
加熱による3Dプリント食品の食感制御域拡大
*島田 勇輝武政 誠
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抄録

【目的】近年3Dプリンターは様々に活用されており,食品分野では自在な外見の造形や食感制御など,従来は困難であった食品加工が可能になると期待されている。しかし食品用3Dプリンターはシリンジからペースト状食材を吐出する方式を採っているため,軟らかい食品しか造形できなかった。また造形後に食品を加熱してかたくしようとすると,食品の変形により食感制御が困難になる課題があった。そのため本研究では,加熱時の変形を抑制可能な食品造形物を作成し,食感制御と加熱を両立する手法の開発を目的としている。

【方法】加熱時に生じる水蒸気が変形の原因と考えられるため,水蒸気排出用の空隙を持つ食品造形物を3Dプリンターで造形した。空隙の大きさや配置が異なる構造で3Dプリントすることで,構造が水蒸気排出,さらには食感に及ぼす影響を検討した。食品造形物はエアフライヤーで加熱し食品圧縮試験を実施した。

【結果】空隙を有する食品造形物は加熱後の変形が抑制され,圧縮加重を最大で約2倍増加させることが可能であった。また食品造形物の食感は,空隙の個数によって制御可能であった。具体的には,圧縮時に楔型プランジャーが食品中を通過する経路上に空隙を配置すると,空隙1つあたり圧縮荷重を約2 N増加させられることが分かった。

本研究で,食品造形物の「加熱時の変形抑制」と「単一素材での食感制御」が可能になった。軟らかい食材しか利用できないフード3Dプリントでは制御可能な食感は限定的であり,印刷後に焼いた場合,食品の変形が意図しない食感変化をもたらす課題があった。しかし本研究により,歯応えのある食品印刷が実現可能となり,今後3Dプリンターを活用した食品造形,特に食感設計可能域拡大が期待される。

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