日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2A-2
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口頭発表
品種・製粉方法の異なった大麦粉を用いた大麦パンの膨化性評価
*中塚 康雄
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抄録

【目的】健康機能性に優れた水溶性食物繊維,β‐グルカンを小麦粉/大麦粉混合パン(以下,大麦パン)として摂取する場合,大麦配合率を高めていくと膨化性が低下するため,現状の大麦配合率の上限は20%に留まっている。大麦配合率を高めるために,膨化性阻害因子を明らかにし,膨化性改善方法を導き出すことを目的とした。

【方法】最初に,パン用途に使用可能な市販大麦粉14種類の粒度分布を測定後,同一製パン条件で30 %配合大麦山型食パンを調製し膨化率を比較した。次に,この中から低食物繊維群として2品種,高食物繊維群として2品種を選び,大麦配合率10~50%の山型食パンを調製し,膨化率に及ぼす大麦粉の食物繊維組成や粒子径との相関性および粒子形態との関連性を検討した。配合材料は強力粉(大麦粉と合せて100%),砂糖8%,塩1.5%,液種酵母8%,加水率58~90%とし,直捏法でドウを調製した。最後に,酵素添加(ヘミセルラーゼ剤,150 ppm,30 ℃,1h保持,2倍量の加水前処理)を試みた。

【結果】大麦パンの膨化性阻害因子は,食物繊維に起因した胚乳細胞壁が粉砕しきれずに残った細胞壁破片と考えられた。細胞壁破片は粒度分布測定結果から50 µm以上の粗大粒子と50 µm未満の微小粒子に層別された。高食物繊維群の大麦品種は平均粒子径,粗大粒子比率ともに大きく,酵素添加後の膨化率改善効果は5%に留まった。特に不溶性食物繊維の多い品種では酵素添加効果が小さかった。低食物繊維群では,10%の膨化率改善効果が得られ,現状の大麦配合比率の上限を20%から30%に引き上げることが可能となった。現在,酵素添加による食物繊維低分子化への影響について検討している。

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