日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2A-4
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口頭発表
赤外線加熱と光透過プレートを併用した白色クラストパンの焼成技術の開発
*佐藤 公俊
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抄録

【目的】パンの材質に含まれるたんぱく質,アミノ酸,還元糖は,生地を高温に熱する過程において160℃辺りでアミノ-カルボニル反応(メイラード反応)により褐色に変色が始まる。これが食パンにおける耳となる部分であるが,サンドウィッチに用いられる場合は,硬い食感と見た目の色づきが理由で,この耳の個所を切除して白い柔らかい部分だけを用いることが大半である。それに対して,耳の除去の必要のない「表面が白いパン」をあらかじめ作成できれば,食品廃棄低減に大いに貢献できるはずである。ただし,パンの焼成工程においてパンの表面を白いままに維持するためには,加熱雰囲気ならびにパン生地表面を上述のアミノ-カルボニル反応が起こらない温度以下に保つ必要が有る。ただし,従来的なオーブンでは高温雰囲気の温度を下げざるを得ず,焼成時間を長くとる必要がある。

【方法】通常パン生地を入れる金属製容器の代わりに透明ガラス製容器を用いて,外部赤外線ヒータからガラスを透過してパン生地を赤外線加熱し,同時にガラス容器外部から冷気を吹き付けて冷却することで,パン生地最表面の温度を下げるという事で目的の状態を実現させる。具体的な実験形態としては,熱源に発光波長が0.9~2 µmのハロゲンヒータを適用し,その波長のせき外線を十分に透過する素材である硼珪酸ガラス製の容器にパン生地を入れ,焼成中はガラス容器を空冷しながら赤外線輻射加熱状態を維持する方法を取る。

【結果】上記方法により実験を行い,パン生地内温度を90~100℃に昇温し所定の水分を蒸発させながら,焼成開始から完了まで約40分という通常の製パン工程と同等の時間で,パン生地表面をアミノ-カルボニル反応の発生しない温度に制御して,白色クラストパンを焼成することができた。

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