日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2B-2
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口頭発表
浅漬の摂取による腸内細菌叢と短鎖脂肪酸の変化の観察
*杉浦 俊作大野 友也森下 美香
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抄録

【目的】漬物は,生野菜と比べてグラム当たりの食物繊維含有量が高く,生野菜と同様に腸内環境への有益な効果が期待される。しかしながら,商業的な漬物,特に浅漬が腸内環境に及ぼす効果に関する研究はいまだ少ない。本研究では,各種浅漬の摂取による腸内環境の変化とその特徴を把握することを目的とした。

【方法】白菜,キャベツ,みぶなを,食塩6%およびアミノ酸含有調味料3%を含む漬け液で1日漬け込むことで,各種浅漬を作製した。その後,浅漬または浅漬前の各種生野菜を凍結乾燥し,得られた凍乾物を被験試料とした。動物試験には,5週齢のラットを用いた。対照飼料と,これに作製した被験試料を5%添加した飼料を設け,14日間摂取させた。その後,HPLCを用いた盲腸内容物中の有機酸濃度の測定およびイルミナシーケンサーMiseqを用いた菌叢解析を実施した。

【結果】盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度は,各種野菜または浅漬摂取群で対照群と比較して,増加したものの,有意な差は観察されなかった。しかしながら,n-酪酸濃度は生キャベツまたはその浅漬摂取群で,対照群と比較して,有意に増加した。また盲腸内細菌叢を解析したところ,野菜またはそれら浅漬の摂取群で,盲腸内細菌叢の多様性が対照群と比べて増加することが観察され,特に漬け込むことで,盲腸内細菌叢の系統的多様性が有意に増加することが観察された。さらに,各浅漬摂取群で増加傾向のあった菌種と酪酸濃度との相関関係を解析したところ,白菜およびみぶな漬では,Lachnospiraceae科の菌種,またキャベツ漬ではClostridium科の菌種で有意な正の相関(p<0.05) を示し,キャベツ漬の酪酸濃度の増加は白菜およびみぶな漬とは異なる菌種が関与することが推測された。

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