日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2B-3
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口頭発表
コンソメスープ調製過程の化学成分変化と熟練者における完成度の判断基準の可視化
*冨永 美穂子迫井 千晶山田 研秋元 真一郎来島 壮石川 伸一湯浅 正洋
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抄録

【目的】料理人の技術の向上や料理の応用展開に役立つ理論を提供するために,おいしい料理を基点に熟練者と非熟練者の牛肉ベースのコンソメスープを試料に比較分析を行い,熟練度による完成品の違いを明らかにしている。本研究では,熟練度等の異なる料理専門学校所属者4名に規定条件の下,コンソメスープを調製してもらい,煮込み操作が風味にかかわる化学成分変化に及ぼす影響ならびに熟練者の完成度の判断基準を明らかにすることを目的に検討を試みた。

【方法】調理経験25年以上の西洋料理担当教員2名(熟練者),各1名の学生および日本料理教員(非熟練者)に材料・切り方・開始重量および使用食塩量を規定し,市販の液体ブイヨンをベースに渾身のコンソメスープを調製してもらった。ブイヨンなどの食材を混合後,加熱開始前を0分とし,加熱30,60分,完成時に液体部分の試料を回収し,塩分,Brix,遊離アミノ酸類,核酸類,有機酸類,糖組成,味覚応答,香気成分などを分析比較した。

【結果】 調製者にかかわらず,煮込み時間の経過に従い呈味成分がスープに蓄積されていき,味覚応答においては酸味や苦味雑味が低下し,旨味と塩味が増加した。それら呈味成分のほとんどは加熱60分までは緩やかに上昇していたが,最終的な煮つめ操作により濃縮され,調製者による濃縮度の差が顕著であった。香気成分の多くは加熱時間の経過により減少傾向にあり,熟練者間で共通の香気特性を示した。熟練者は調製終盤の煮つめ操作でスープが濃縮された旨味とコク味の強さと,暗褐色で黄色の強度が強いスープの色(外観)で完成度を判断していることが示唆された。

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