日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2B-4
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口頭発表
ゆで加熱中のカボチャのビタミンC損失過程のシミュレーション
*栗谷 萌佐藤 瑶子
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抄録

【目的】カボチャはアスコルビン酸オキシダーゼ活性が高いことが報告されており,ゆで加熱中には水中への溶出と酵素反応の両者がビタミンCの損失に影響すると考えられる。本研究では,ビタミンC損失過程のシミュレーションを行うことを目的に,両者の影響を評価した上で,溶出時の拡散係数を測定した。

【方法】西洋カボチャを1 cm角に成型し,真空包装して95℃で5分間加熱した酵素失活試料と未処理試料を用いた。40~95℃で0~120分間加熱し,試料およびゆで水中のビタミンC含量(アスコルビン酸およびデヒドロアスコルビン酸)の変化を測定した(HPLCポストカラム法)。酵素失活試料の測定結果にフィッティングするように,溶出過程のシミュレーションに必要な拡散係数を,有限要素法ベースのシミュレーションソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて算出した。さらに2 cm角の西洋カボチャ(未処理)を水温上昇速度2℃/minで加熱し,ビタミンC含量を測定して予測値と比較した。

【結果】カボチャ中のビタミンC残存割合は,40℃では酵素失活試料のみ膜機能が低下していることで未処理よりもビタミンCが減少したものの,60℃以上では未処理と酵素失活で同程度であった。一方,ゆで水中は60℃浸漬の時のみ,未処理の方が有意に少なかった。よって,カボチャ中のビタミンC損失の原因は主にゆで水中への溶出であり,酵素の影響は水中で現れると考えられた。そこでカボチャからの溶出過程をシミュレーションするために,拡散係数を算出して温度依存性をアレニウスの式で表した。水から加熱する場合のビタミンC減少割合の変化の予測値は実測値とおおむね一致し,溶出過程の解析によりカボチャ中のビタミンC損失過程の予測が可能であることを確認した。

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