日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1A-5
会議情報

口頭発表
ジャムおよび油脂系スプレッドの添加がパンの模擬食塊の物性に及ぼす影響
*池ヶ谷 篤
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】食パンは水分量が少ないことから唾液の分泌量が低下した高齢者等にとっては食塊形成が難しくなり,食べにくいことが予想される。食パンを食べる際にはジャムやバター,マーガリン等の油脂系スプレッドを同時に摂取することが多いため,これらの添加が食塊の物性に及ぼす影響を明らかにする。

【方法】食パンのクラムを粉砕し,これに人工唾液と食パンに塗ることを想定した量のイチゴジャム,バター,マーガリン,高脂肪タイプと低脂肪タイプの2種のファットスプレッドを加えて乳鉢で練り,模擬食塊を調製してその物性を測定した。加えて,糖度と粘度が異なる9種類の模擬ジャムと,キャノーラ油と水を異なる比率で混合したエマルジョンを調製し,これらを添加して同様に模擬食塊を調製して物性を調査することで,ジャムおよび油脂系スプレッドが食塊の物性に影響を与える要因を探索した。

【結果・考察】イチゴジャム,バター,マーガリン,2種のファットスプレッドのいずれも添加することで模擬食塊の硬さと付着性が有意に低下した。その効果についてはイチゴジャムと低脂肪のファットスプレッドが高かった。

模擬食塊の硬さは低糖度かつある程度の粘性を有する模擬ジャムを加えた際に最も低下した。逆に効果が低いものは高糖度でペクチンを添加していない模擬ジャムであった。油と水のエマルジョンについては,いずれの比率においても添加することで模擬食塊の硬さは有意に低下した。また,油の比率が高まるにつれて付着性が低下する傾向がみられた。

これらの結果から,ジャムや油脂系スプレッドに含まれる水分はパンの食塊の物性を嚥下に適したものとするが,水分と同時に油分を加えることで,より効果が高まることが示唆された。

著者関連情報
© 2023 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top