日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1A-6
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口頭発表
自然薯混合蒸しパンの物性と若年者および高齢者による咀嚼・嚥下特性
*村井 尚子村上 紗希吉岡 泰淳三好 規之桑野 稔子吉村 美紀江口 智美
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抄録

【目的】スポンジ状構造を持つ蒸しパンは,口腔内で唾液と混合されると付着性が増し,咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者にとって窒息の原因となりうる。静岡県特産品である自然薯のとろろは,べたつかずに喉ごしが良いため,蒸しパンに混合することで付着性増加を抑制できるのではないかと考えた。また,抗酸化・抗がん作用などを有する成分を含み,健康長寿を支える食生活への利活用が望まれる。そこで本研究では,自然薯を混合した蒸しパンの物性および咀嚼・嚥下特性から高齢者用食品としての適性を検討した。

【方法】試料は,コントロールとして小麦粉と副材料を用いた蒸しパン(0%)と,0%の小麦粉重量に対して50%または100%の重量の自然薯を混合した蒸しパン(50%,100%)とし,各バッターの水分と炭水化物含量を統一した。試料の水分含量,比容積,テクスチャー特性を測定し,高齢者(10名,74.2±4.2歳)および若年者(10名,23.1±0.7歳)による咀嚼筋筋電位測定を行った。

【結果】水分含量と比容積は,試料間に差異は認められなかった。テクスチャー特性では,0%より50%,100%で有意に硬く付着性が小さかった。筋電位測定では,世代と試料間の交互作用に有意差は認められず,世代間に有意差は認められなかった。試料間を比較すると,咀嚼回数や咀嚼に関わる筋活動時間は同程度だが,開口および嚥下に関わる筋活動時間と筋活動量は0%より50%,100%で有意に低値だった。また,咀嚼に関わる筋活動振幅は0%より50%,100%で有意に低値だった。自然薯のとろろを混合することで,若年者・高齢者の両世代において咀嚼・嚥下しやすい蒸しパンとなる可能性が示唆された。

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