日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1B-1
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口頭発表
模擬微小重力および過重力環境が調理現象に及ぼす影響について
*狐野 大誠石川 伸一
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抄録

【目的】将来,宇宙での長期滞在を実現するにあたり,従来の宇宙食では不十分であり現地で調理することが重要になると考えられている。月面農場ワーキング検討報告書では,穀物や野菜の生産については検討されているものの,消費にあたる調理に関しては課題が残されたままである。そこで本研究では,地上と宇宙での大きな違いである「重力」が基礎的な調理現象に及ぼす影響について調べることを目的とした。

【方法】重力変化はクリノスタットを用い,模擬的な微小重力(1/1000 G)および過重力(5 G)環境下での実験を行った。①うるち米,もち米,玄米を5℃・60分間浸漬し,乾燥させた。アルミ秤量法を用いて乾燥前後の水分含量から水分率を測定した。②冷凍パン生地を解凍後,30℃・18時間発酵させ,200℃・5分間焼成した。焼成後,菜種法を用いて密度の計測を行った。③牛乳に種菌を入れ攪拌し,40℃で4,8,および24時間発酵させた。各時間経過後時における,pHと糖度・酸度の計測を行った。

【結果】①うるち米ともち米に関して,重力の違いによる水分率の差はみられなかった。玄米では1/1000Gで水分率が5 Gと比較して有意に低かった。②密度に関して,重力の違いによる差はみられなかった。③pHは時間経過に伴い,1/1000Gで1 Gや5 Gと比較して有意に高かった。糖度は8時間後の1/1000 Gにおいて1 Gや5 Gと比較して有意に高かったが,24時間後では差は見られなかった。酸度は時間経過に伴い,1/1000 Gで1 Gと5 Gと比較し有意に低い値であった。これらの結果から,重力変化が特に発酵食品に影響を及ぼす可能性が示唆された。今後重力が調理に及ぼすメカニズムなどの知見を蓄積することで,「宇宙調理学」の創成につながると考えられる。

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