日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1P-27
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ポスター発表
和食における煮汁の香りによる味の認識への影響
*真部 真里子入江 美樹的場 七海中原 茅乃清水 杏奈寺島 あおい篠崎 洋平
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抄録

【目的】醤油と鰹だし,みりんを組合わせた試料を用いた和食の煮汁の中で,醤油にみりんを加えた試料の香りに塩味増強効果を見出した。一方,鰹だしの香りが塩味を伴うとうま味を惹起することを確認している。本研究では,和食の煮汁の香りが塩味以外の味の発現に及ぼす影響を検討した。

【方法】におい試料には,濃口醤油を超純水で25%希釈した未加熱希釈液とこれを10分加熱した加熱希釈液,八方だしをモデルとして,醤油の鰹だし・みりん希釈液ならびにこの液のみりんまたは鰹だしを超純水に置換した鰹だし希釈液,みりん希釈液を調製し,10分加熱して試料とした。これらの試料の香気特性をGC-O分析にて明らかにした上で,各におい試料の香りを後鼻腔経由で,水または0.8%食塩水に付与したときに認識しうる味と香りについてCATA法による官能評価で検討した。

【結果】香りに関しては,塩味は醤油の香りを強調すること,鰹だしの香りが嗜好性を高めることが確認できた。また,塩味は,鰹節の香りを強調させること,塩味に醤油の香りが加わると鰹節の香りを連想させることが推測された。一方,味に関しては,香りを水に付与した場合は,明確に認識されうる味はないと考えられたが,コレスポンデンス分析では,におい試料が「醤油」は塩味,「みりん」は「甘味」を,だしを含む試料は「うま味」を誘発する傾向にあった。食塩水の場合は,従来通り,鰹だしの香りによって「うま味」が感じられた。香りの結果も考慮すると,醤油の香りと塩味によって,だしを想起し,うま味がすると錯覚をひき起こすと推察された。

本研究の一部は科学研究費研究助成事業(19K02343)にて実施した。

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