日本調理科学会大会研究発表要旨集
2024年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1C-1
会議情報

異なる水を用いて抽出した昆布だしのマルチ分光解析
香川 知美末原 憲一郎亀岡 孝治大引 伸昭湯川 徳之小山 鐘平*橋本 篤
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】だしは日本料理に欠かせないものであり,料理に適しただしが求められるとともに,だしの特性に基づいた調理が重要となる。代表的なだしの一種である昆布だしに関しては,昆布の特徴とともに抽出に用いる水がだしを特徴付ける重要な因子となる。本研究では,昆布だしの抽出に用いる水の特性に着目し,昆布だしのうま味成分であるグルタミン酸濃度測定に加え,蛍光X線,紫外・可視,赤外分光情報に基づいた昆布だしの抽出挙動の把握を試みた。

【方法】真昆布(北海道東戸井産1等級)および高度の異なる複数のミネラルウォーター(硬度:約30~300)を実験試料として用いた。ミネラルウォーター1 Lが入ったフリーザーバッグを低温調理器(BONIQ Pro,葉山社中)の水槽中で加熱し,設定温度(60℃)に到達した後,試料昆布30 gを投入した。抽出開始後,10分毎に60分までだしをサンプリングし,グルタミン酸濃度,蛍光X線スペクトル,紫外・可視吸収スペクトル,赤外吸収スペクトを測定した。

【結果・考察】出汁の抽出成分含量および成分バランスに及ぼす抽出用水の硬度の顕著な影響は認められなかった。そこで,抽出に用いた水に含まれるイオン成分に着目し,硬度が同様でイオン成分の異なるミネラルウォーターを用いて抽出実験をおこなったところ,イオン成分の差異が抽出挙動に影響を及ぼしていることが実験的に認められた。また,だしの正規化マルチ分光情報に基づいた主成分分析の結果,抽出用水の陰イオンと陽イオンの種類や濃度比の差異が抽出挙動に大きな影響を与える可能性が示唆された。

謝辞 本研究の一部は公益社団法人東洋食品研究所食品研究助成金の助成を受けたものです。

著者関連情報
© 2024 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top