日本調理科学会大会研究発表要旨集
2024年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1A-8
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伝統食品「くろこ」製造過程におけるデンプンと食物繊維量の変化
*高橋 雅子阿部 雅子森下 雄太岡田 早苗辻 聡村松 芳多子綾部 園子
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抄録

【目的】「くろこ」は群馬県嬬恋村の伝統的な保存食品である。特産のじゃがいもをすりおろしてデンプン(片栗粉)を採取した後の残渣(以下くろこ原料)を半年間冬季の屋外で保蔵後、滓を分離し、洗浄・乾燥して製造する。これまで「くろこ」は経験的な製造法に頼られ成分などに不明な点が多い。そこで、本研究では「くろこ原料」から「くろこ」の製造過程中の成分変化を明らかにすることを目的とした。

【方法】試料は、嬬恋村くろこ保存会が製造した片栗粉・一番くろこ・くろこ(二番くろこ)を用いた。また、2022年11月に保存会が製造した「くろこ原料」を嬬恋村で保蔵した嬬恋保蔵試料と、研究室で4℃保蔵した研究室保蔵試料を用いた。常法により一般成分(水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物)とデンプン(AA/AMG法)および食物繊維(酵素-重量法)を測定した。さらに、保蔵中の試料の温度も測定した。

【結果・考察】「くろこ原料」の成分は、乾物換算でたんぱく質5%、灰分2%、炭水化物93%(うちデンプン72%、食物繊維20%)であった。「くろこ」の製造過程で得た「片栗粉」は、食品標準成分表の「じゃがいもでん粉」に近似していた。「くろこ」の成分は乾物換算で、炭水化物98%(うちデンプン92%、食物繊維5%)で、主成分はデンプンであった。24週間保蔵した「くろこ原料」から「くろこ」を分離した結果、嬬恋保蔵試料の収率は28%で、研究室保蔵試料は7%で保蔵条件による差があった。嬬恋の「くろこ」はデンプン89%、食物繊維6%で、一方「滓」は食物繊維が40%であったことから、「くろこ原料」に残存していたデンプンが保蔵中に分離しやすくなり「くろこ」が得られたことが示唆された。

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