主催: 一般社団法人日本調理科学会
会議名: 2025年度大会(一社)日本調理科学会
回次: 36
開催地: 東海学園大学
開催日: 2025/08/30 - 2025/08/31
【目的】育ち過ぎで規格外となったアラゲキクラゲに着目し、スイーツ素材としての利用可能性を探ることを目的とした。アラゲキクラゲとシロキクラゲは生物学的に異なる分類群に属するが、いずれもゼラチン様の食感を持ち、乾燥品を水戻しして用いる点で共通する。本研究では中国料理でデザートとして用いられるシロキクラゲの調理法に着想を得て規格外アラゲキクラゲを圧力鍋で加熱し、得られた煮汁の粘性と化学組成を比較、分析した。
【方法】乾燥両キクラゲ各5gを精製水500gに8時間以上浸漬後、圧力鍋で1時間、常圧で30分加熱して煮汁を得た。粘性はBrookfield型粘度計(TVB-15形、東機産業)で測定した。アラゲキクラゲはさらに10g、20g、30gで調製し、濃度依存的な粘度の変化を確認した。タンパク質量はBicinchoninic acid assay(BCA法)で定量し、化学組成解析には煮汁2mLを凍結乾燥し、重水(D₂O)に溶解後、一次元¹H-NMR測定(AVANCE III-HD 500 spectrometer)を実施した。
【結果】シロキクラゲ(5g)煮汁は高い粘性を示したが、アラゲキクラゲ(同量)では相対的に低かった。アラゲキクラゲを30gに増量した場合、シロキクラゲ煮汁に類似する粘性が得られた。両種の煮汁において粘性は確認されたが、BCA法による定量では、アラゲキクラゲで167.7 μg/mL、シロキクラゲで214.5 μg/mLと、いずれもタンパク質量は少量であった。したがって、粘性はタンパク質由来ではなく、多糖類とくに糖組成による影響が大きいと推察された。NMR測定の結果、シロキクラゲ煮汁には1.2 ppm付近に特徴的なシグナルが観察され、海藻類にも多く含まれるフコースに由来すると考えられた。