日本調理科学会大会研究発表要旨集
2025年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2B-3
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実際の運用における官能評価の比例尺度データを収集するための課題抽出
*下藤 悟甫木 嘉朗森山 洋憲明神 真山脇 朋泰
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抄録

【目的】食品加工事業者では品質管理や商品開発を目的とした官能評価が行われているが、より高解像度な解析を行うためには信頼性の高い比例尺度データを収集したい。そこで、実際の現場で行われた官能評価の評価傾向を数値化することで、データ活用のための課題を明確にすることを目的とした。【方法】試験は酔鯨酒造株式会社にて実施した。対象試料は清酒である。評価者は9名とした。まず、パネリスト選抜試験を行った。項目は3種類の順位法(日本酒度、酢酸イソアミル、酸度について5検体ずつ)、五味+金属味の判別、Open Essenceによる香りの判別とし、正答率で評価者を3つに分類した。続いて製品評価のデータを収集し、評価傾向をランダムフォレストによる重要度と重回帰分析による重回帰係数で判定した。試料は201品(ただし評価者で評価数が異なる)、評価は2024年1月~9月までの間に実施した。評価項目は0-100のLAM尺度法(香り・甘味・酸味の強さ)とした。試料の特徴は清酒の一般的な成分値(香気成分8成分、グルコース量、酸度、アミノ酸度、日本酒度、アルコール濃度)を分析した。評価結果を目的変数、標準化した成分値を説明変数として回帰分析を行い、決定係数を算出した。【結果・考察】香りと甘味の強さについて、選抜試験の正答率が高い評価者は決定係数が0.50~0.94と高く、分析値に基づいた評価をしていることが示された。しかし、評価傾向はいずれの項目も正答率と関係性が見られなかった。選抜試験の正答率が高く、評価傾向が揃っていることが事業者にとってデータの信頼性が高い状態といえるため、それに向けた課題を決定係数と評価傾向を数値比較することで明確にできた。

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