【目的】 渋みは唾液中のプロリンリッチなタンパク質がタンニンなどと結合して起こるという説が優勢であるが、最近の発展を考慮し、過度の渋味を減らす手法の開発を考えるために、さらなる検証が必要である。トランス脂肪酸の健康上の問題を考慮すると、オレオゲルの利用によるマーガリンやバターの代替レシピの持続可能性を考慮した開発は重要である。
【方法】 ワインの渋みについてはモデルワイン(酒石酸、エタノールとタンニンの混合系)とモデル唾液(ブタ胃由来ムチンと無機塩類より調製)の摩擦係数をSteel on 3 PDMS pins法により測定し、官能評価と比較する。大豆繊維粒子を溶解しない大豆油に微小量の水を加えるとオレオゲルを形成できるが、パンの焼成に応用した場合のテクスチャーの改善の度合いを検討する。
【結果と考察】 Stribeck曲線の境界潤滑領域における摩擦係数の最大値はモデルワイン中のタンニン濃度および官能評価での渋味強度と強い相関関係を示したので、ワインの渋味はワイン中の渋味誘因物質であるタンニンと唾液中のムチンの複合体形成により起こるという説でほぼ説明できると考えられた。しかし、渋み誘引物質と口腔内粘膜との相互作用に関しては、活発な研究が継続されており、さらなる検討が必要である。オレオゲルを使って、バターを使ってできたパンと遜色のないパンを作ることができ、優れた製パン性を示すことが分かった。パン以外の食品への応用も有意義と考えられる。Zhu, Yang et al, J. Texture Stud.,55, e12820 (2024) ; Li, Gao et al, Food Res. Int.,164 112369 (2023)