主催: 一般社団法人日本調理科学会
会議名: 2025年度大会(一社)日本調理科学会
回次: 36
開催地: 東海学園大学
開催日: 2025/08/30 - 2025/08/31
[目的]近年、マーガリンやショートニングなど、加工油脂食品中のトランス脂肪酸の排除と飽和脂肪酸含量の引き下げを目的とした食用油脂として、オレオゲルが注目されている。オレオゲルとは、液状油に10 wt%未満のゲル化剤を加えることにより形成される半固体状の物質である。これまでの研究では、トランス脂肪酸を含まない低飽和脂肪酸マーガリンの作製に向けた研究が行われており、その一環として、トリアシルグリセロール分子の一種であるPSPを多く含む、ゲル化剤(FHHPMF)をキャノーラ油に0.5 wt%添加し、オレオゲルを作製したところ、繊維状の結晶が晶出した。また、透過電子顕微鏡(TEM)観察から、オレオゲル中の繊維状結晶が、単結晶の特徴を持つ、ウィスカー結晶であると明らかになった。また、ウィスカー結晶から構成されたオレオゲルは、高い安定性と粘弾性を持つことが分かっている。そこで、本研究では、物性制御可能なオレオゲルの開発に向けたウィスカー結晶形成メカニズムを明らかにすることを目的とした。
[方法]高純度PSPをゲル化剤としてキャノーラ油に加えたサンプルについて、暗視野顕微鏡(DFM)観察とTEM観察による結晶構造評価を行った。また、いくつかの液状油にFHHPMFをゲル化剤として加え、冷却時間と保管温度を制御したオレオゲルについて、DFM観察とレオロジー特性試験を行った。
[結果]高純度PSPを用いたオレオゲルを、より高温で保持すると、ウィスカー結晶がより長く伸長するという結果が観察された。また、冷却制御を行うことで、異なる種類の液状油でも、ウィスカー結晶が発現した。発表当日には、ウィスカー結晶の形成制御と物性の関係についても説明する。