キャッシュレス決済が急速に普及している。生活に不可欠な決済においても障がい者のバリアフリーの実現が求められる。キャッシュレス決済も,広い意味で情報法制に係るものであり,アクセシビリティ実現へ向けた障害関連法の課題を考察する必要がある。まず,アクセシビリティの実現に係る国連障害者権利保障条約,障害者差別解消法等の関連法を整理する。また,これまでの障がい者の日常生活で直面する問題に関する調査,金融庁による金融機関に対するアクセシビリティ対応に関する調査の結果等を踏まえ,現状と問題点を把握する。さらに,日本産業規格(JISX8341)の役割,総務省が提供するアクセシビリティ評価ツール(miChecker)を利用してキャッシュレス決済に係る事業者のウェブページの検証も試みる。これらの考察を通じて,キャッシュレス化における民間事業者の取組みが障害者差別解消法8条に基づき障がい者への合理的配慮を具体化するために,アクセシビリティに関する決済事業者の取組みの定期的な対応調査,ガイドライン等整備の必要性について論じる