2022 年 21 巻 5 号 p. 139-158
1980年代後半から2000年代にかけて、清酒消費低迷や、等級制度の廃止と酒類販売の規制緩和など、清酒業界には大きな変化があり、多くの酒蔵と一般酒販店が廃業に追い込まれた。しかし、中小酒蔵の中には桶売り (大手への下請け) を脱し、高品質の地酒を自社銘柄で生産・販売し、更には海外への販売を増やす酒蔵が現れた。一方、生き残りをかけて個性ある地酒を扱い専門店化する一般酒販店も現れた。本稿では、清水清三郎商店 (三重県の酒蔵) とその酒販専門店や海外の輸入販売者を調査対象とし、そこへの聞き取り調査を通して、酒蔵と販売取引先の関係にどのような特徴があり、中小酒蔵が国内外で自社銘柄を生産し訴求していく上で、それらの特徴がどのような役割を果たしているかについて解明する。