建築用板ガラスの製法は公知であるにも関わらず、なぜ世界市場は寡占となっているのか。また、種々の板ガラス製品においていずれも旭硝子が高い市場シェアを有しているのはなぜか。板ガラスの工場は消費地立地が基本であるので、もし同社に独自技術や操業ノウハウがあるとすれば、それらをどのように海外工場に移転し、製品を立ち上げているのか。これらの問題を明らかにするために、本稿では、藤本隆宏 (2001, 2004) の競争力の分析枠組に従い、製品ごとの競争力分析を行うとともに、建築用板ガラスを始めとする海外生産展開、とりわけアジアの主要生産拠点であるタイ工場のマネジメントの調査分析を行った。