論文ID: 0171027a
ハーレーダビッドソンジャパン (以下、HDJ) の成功要因として、他の二輪車メーカーは、業販・並行輸入のない統制のとれた販売網やHDJとそのディーラーによる顧客コミュニティ活動を指摘する。しかし、HDJは全て他人資本によるディーラーの正規代理店制度により流通系列化を推進し、販売網を構築してきた。これらのディーラーはHDJと代理関係にあるとはいえ、依然として売買関係にあるばかりか、大半は、経営資源に乏しく目先の売上を志向する家族的経営を行い、理屈だけではなく感情面での納得がないと動かなかった。こうしたディーラーに対し、HDJが経営や販売プロセスまで深く関与するのは、容易なことではなく、それ相応のプロセスを踏む必要があった。本論では、1989年から2008年までを対象期間として、HDJが他人資本であるディーラーに深く関与してHDJの意図する機動的な組織運営を可能とした流通系列化の背景には何があったのか、制度的マネジメントと人的マネジメントから説明する。