論文ID: 0230601a
第3章はプロセス論的な観点をとるルーチン論についてプラグマティズムの概念を用いた新しい問題解決のモデルの構築を試みている。まず、従来のルーチン論について、プロセス論的な観点からとらえようとしたときに、①二元論、②組織化と学習についての不一致に基づいた理論、③時間的な問題、④ミクロ・マクロ問題という四つの障害があることを指摘している。そのうえで、プラグマティズムの概念のなかから習慣、探究、会話的なトランスアクションの三つを取り上げて、問題解決のプロセスに適用して、プロセス論的な観点に則った新しいアプローチを構築している。ただし、第2章においては、プロセス論的な観点を取り入れるときに必須の要素として、パターニングとパフォーミングを不可分なものとしてとらえるということが言われている。これはすなわち二つの行為の要素がそろってこそプロセス論的なルーチン論といえることを意味している。すると、第3章の議論は、パフォーミングのみを精緻化したものとしてとらえられることとなり、プロセス論的なルーチン論として不十分であり、さらなる理論的な発展を求められると考えられる。