自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
総説
脳脊髄液減少症の歴史的展望 ―Schaltenbrandの業績を中心に―
田村 直俊光藤 尚
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2019 年 56 巻 3 号 p. 162-169

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抄録

脳脊髄液(CSF)減少症の原因は,潜在的な外傷によるCSF漏出と説明されているが.1970年代以前はCSF漏出の有無にかかわらず,CSFの産生低下によって生じると推定されていた.Hosemann(1909),Haug(1932)は腰椎穿刺後CSF減少症の原因として,現在でいう体位性頻脈症候群(PoTS)による代償性のCSF産生低下を考察した.Schaltenbrand(1938,40)は自然発生性CSF減少症におけるキサントクロミーの存在を強調し,CSFの蛋白量は血管周囲腔由来のCSFの方が脈絡叢由来のCSFより高値のため,本症の原因は脈絡叢のCSF産生低下であると主張した.Geller(1940)はCSF減少症患者の大多数が基礎疾患としてPoTSを有することを報告した.最近,CSF減少症とPoTSの共存が示唆されており(Grafら,2018),1970年代以前の研究を再評価する必要がある.

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© 2019 日本自律神経学会
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