The Journal of Antibiotics, Series B
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Leucomycinに関する研究
2. 基礎的研究 3. 孵化鶏卵を使用しての研究特にErythromycinとの比較について
沼尾 欣一
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1957 年 10 巻 3 号 p. 98-120

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抄録

余は前篇において, 純邦製の新抗生剤として最近製作されたLeucomycin (以下LMと略記) を使用し, これの臨床的研究成績を述べ, 内服ならびに静注后人体, 家兎およびマウスの血中その他の諸臓器中に有効濃度以上に本剤が移行することを実証し, その後, 小児の急性感染症11例に本剤を用い, 内104例に甚だ有効であることをみとめた。
本篇においては, LMの艀化鶏卵に及ぼす影響について観察し, Erythromycin (以下EMと略記) のそれと比較検討してみた結果について報告する。
既に, 本学薬理学教室においても, ここ数年来, 各種の薬剤を艀化鶏卵の卵白内に注入し, その后の鶏胎仔の発育に及ぼす影響について, 各種の実験成績を報告している。すなわち, 東郷はStreptomycin (以下SMと略す) の鶏胎仔の発育に促進的に作用する最適量は, 種卵1個当り20mgであり, それよりも高濃度または低濃度の場合には, 発育が一時的に抑制される傾向があると述べており1), 教室の竹内も, SMの鶏胎仔Ca代謝に及ぼす影響についての研究をおこない, SM負荷によつて鶏胎仔の発育は低濃度においては比較的促進の傾向を示し, 高濃度では抑制されるか, または対照と変らないと報じている2)。川北は, S Mおよびヨードリの単独ならびに併用投与の鶏胎仔に及ぼす影響について, 各注射例とも概ね対照と大差がないと報じている3)。教室の月岡は, Bornylamine penicillin Gを用いて鶏胎仔の発育を見ているが, 対照のProcaine penicillin Gの場合は軽度ながら促進的に作用するが, 本剤ではむしろ抑制的に作用すると報じている4)。その他の実験で, 薬剤が鶏胎仔の発育を, 薬剤の使用量によっては, 僅かながら促進的に作用すると報じているものに, 河内のAtropine, Scopolamineを用いてのAtropineの成績5), 広田6), 野呂7), 森8) の唾液腺ホルモン (Parotin) を用いての実験成績等がある。また, むしろ鶏胎仔発育を抑制的に作用していると報告しているものには, 武藤その他のINAHを用いての実験9), 角尾その他のNicotineを用いての実験成績等がある10)。更に, 対照群となんら発育の差を認めなかつたと報じているものに, 堀のPASを用いての実験11) およびDulcinを用いての実験2), 和田のSaccharinを用いての実験成績等がある13)。
ここにおいて余は, 胎生期の薬理学的研究の一端として, LMの鶏胎仔の発育に及ぼす影響ならびに尿嚢水中への排泄状況をEMと比較検討し, LMならびにEMの生体内運命を解明する一助とした。なお, LMならびにEMの毒性を吟味する目的から, 胎仔の肝臓および腎臓の病理組織学的検索を併わせ施行した。

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