抄録
本研究目的は,有機農業がバングラデシュの小農の家計を改善するか否かを検証することにある.調査は3つの地域で行い,400戸の有機農家から NGO(90戸),非―NGO(60戸)の有機農家をランダムに 150戸抽出し,アンケートを行った.
結果は,どのグループの有機農家も収入のほぼ40%を有機農業から得ている.ステップワイス回帰分析によれば,有機農業が有機農家の家計に占める割合の強さは,他の収入源である送金,畜産,慣行農業,水産業等に比べて自由度調整済み決定係数 97 .4%のうちの 42 .8%を占めており,有機農業が農家家計の改善に大きな比重を占めている様子が窺われる.
また,有機農家の所得改善には土地面積,有機農業の継続年限,訓練,市場へのアクセスが意味を持つが, NGOの有機農家では特に有機農業の継続期間が,非― NGO農家の場合には土地面積の広狭が所得改善に大きな意味をもっている様子が示された.