抄録
アワ•ヒエ•キビの三者は,栽培の歴史が古く,繩文時代に湖るのではないかと,しばしば取沙汰されるが,まだ実証されていない.小形のため,炭化したものの外形からの識別は,時代の新しいものについても容易とはいえない.しかし,内頴や外頴の表皮細胞が残存して観察されれば,その形態的差異により識別可能であることは,例は少ないが,灰像法による報告で示されている.
走査型電子顕微鏡(SEM)を利用すると,炭化粒を灰化する必要もなく,細胞の位置関係などの情報が増し,識別がより明確になる.本報告は,最もよく知られているアワを例,SEM でどのような像が観察されるかを,平安時代の岩手県江刺家遺跡出土粒と,現在の栽培アワで示した.繩文時代の出土物との比較の際に役立つと考えられる.