キャッサバ(Manihot esculenta Crantz)は熱帯・亜熱帯地域で広く栽培される重要な澱粉資源作物であり,その澱粉は独特のもちもち性を特徴とする.この澱粉の生合成システムは植物間で高度に保存されているにもかかわらず,澱粉の性質には明確な植物種特異性が存在する.本稿では,キャッサバ塊根における澱粉生合成機構について,主に澱粉合成酵素(SS)および枝作り酵素(SBE)の機能解析から得られた知見を紹介する.SBEがアミロペクチンの分岐構造に与える影響はイネやジャガイモと類似のパターンを示す一方,SSの一つであるSS2型の欠損によるクラスター構造形成への寄与や澱粉粒形態の変化は植物種ごとに異なっていた.一方,澱粉形質の改変を含むキャッサバの分子育種を推進するため,培地組成の最適化によりキャッサバ形質転換系を構築し,ゲノム編集による遺伝子機能解析を可能にした.加えて,交配育種に向け,福山大学においてキャッサバの開花誘導にも成功した.これらの澱粉改変技術と花成制御研究の進展は,基礎研究の知見を新品種の開発へとつなぐ分子育種基盤の構築を目指している.