食品の「おいしさ」は,原材料の特性だけでなく,調理や保存といった加工過程において生じる物理的・化学的・生物学的変化の積み重ねによって形成される.本稿では,糖質系食品であるピッツァクラストの調理過程と,水産食品の保存過程を対象に,調理科学的視点から「おいしさ」がどのように形成・変化するのかを整理した.ピッツァクラストでは,生地設計や焼成条件が水分状態や内部構造の形成に影響し,それが最終的な食感として知覚されることを示した.加えて,水産食品では,保存条件の違いが微生物群集の変化や代謝に影響し,においを中心とした品質変化につながることが示唆されている.これらの事例から,調理および保存操作は単なる工程ではなく,食品内部の状態を段階的に変化させる操作として捉えられること,官能特性を理解するためには多面的な評価が重要であることが示された.本稿は,異なる食品分野の知見を通して,加工・保存過程における品質形成の考え方を整理することを目的とする.