2018 年 8 巻 1 号 p. 56-62
サツマイモは,火山灰土壌の痩せ地で台風の常襲地域である南九州の風土に適合した基幹作物の1つであり,焼酎産業や澱粉産業の原料として地域経済を担っている.本研究では,サツマイモに低温糊化性澱粉を有する特殊な系統が発見されたことを契機として,澱粉の物理化学特性の優位性や構造変異の原因酵素,形質の遺伝様式などを明らかにする一方,品種改良により同様の澱粉を有する多収・高澱粉の原料用品種「こなみずき」を育成することに成功した.また,「こなみずき」澱粉の用途拡大を目的として,栽培条件や澱粉製造条件と澱粉特性との関連性を明らかにして澱粉の品質向上を図るとともに,「こなみずき」澱粉を用いた加工食品は耐老化性と弾力性に優れ,これらが澱粉の特殊な分子構造に起因していることを明らかにした.これらの研究成果を基にして生産農家や食品製造業などの実需者へ「こなみずき」の普及に努め,その結果,平成28年度で栽培面積は47ヘクタール,塊根の生産量は1,300トンを超え,その澱粉を用いた麺やパン,菓子類の製品化が実現しており,地域振興に貢献している.