本研究では,石鎚黒茶の製造容器,発酵時の部位及び製造ロットの違いによる微生物への影響について検討した。石鎚黒茶は愛媛県で製造され,製造時に好気発酵及び嫌気発酵の二段階発酵を行う。伝統的製法では嫌気的二次発酵に木桶を用いていたが,現在はポリバケツを用いている。同年に複数ロット製造された二次発酵時にポリバケツまたは木桶を用いた茶について,各発酵段階における茶葉内部,表層の茶葉から微生物を分離するとともに,次世代シーケンサーを用いた微生物群集構造解析を行った。製造条件によらず,一次発酵でAspergillus属真菌が,二次発酵で乳酸菌が優占しており,正常な発酵進行が示唆されたが,酵母の種類について製造容器による差がみられた。製造容器による酵母への影響は,製品の風味にも影響する可能性がある。また,一次発酵後茶葉内部から乳酸菌が検出されるなど,発酵時の部位による影響も確認された。本研究により得られた知見は,石鎚黒茶の伝統的製法の応用や製造の安定化につながると考えられる。