バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
Online ISSN : 1884-8699
ISSN-L : 1884-8672
バイオフィリアリハビリテーション学会
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基調講演
創動運動による脳機能の活性化
田中 敏幸
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p. 7-

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抄録

近年の高齢化により脳卒中患者数が増加を続けており,一人の理学療法士が一人の患者に対してリハビリを行うという従来のリハビリシステムでは限界がある.そこで,一人の理学療法士が複数の患者を同時に対応できるシステムが検討されてきた.その一つが滝沢メソッド(Takizawa Method)と呼ばれるものである.滝沢メソッドは,リハビリ患者の多くが片麻痺患者であることに注目し,患者の健側の機能を利用して患側のリハビリを行うことを考えたものである.理学療法士と同程度の動作を与えることはできないが、患者の健側が理学療法士のサポートをすることができる.理学療法士が行う他動運動に対して、滝沢メソッドのリハビリは創動運動と呼ばれている.最近では,創動運動という表現も定着してきているように思われる.

最近多く提案されているリハビリテーションは,ロボットや器具を身体に装着してリハビリを行うというものが多い.ロボットや装着器具の作製に必要な技術が飛躍的に発展していることで,そのようなリハビリシステムの提案が多くなってきているように思われる.ロボットや装着器具を用いたリハビリにおいても,患者がロボットを利用する場合と理学療法士がロボットを利用する場合の2種類がある.患者がロボットや装置を使う場合,工場などで用いる装置よりもさらに安全でミスのない技術が要求される.ロボットや装着器具は,患者の動かない部分を強制するためのものであるが,一つの欠点として患者がロボットや装着器具の力に頼ってしまい,結果としてリハビリにならない可能性がある.理学療法士がロボットや装着器具を利用する場合には,理学療法士の身体の補助が目的となる.この方法では理学療法士のリハビリ作業の助けにはなるが,理学療法士は一人の患者に対応することになる.ロボットや装着器具を利用したリハビリは,高額な費用がかかったり,従来のシステムからの脱却ができなかったりという問題点を抱えている.滝沢メソッドのソリューションは,理学療法士の不足や高齢化社会における脳卒中患者の増加などに対応できることから,世界的にも期待が集まっている.

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