2022 年 71 巻 10.11 号 p. 563-570
ラジカル重合で合成されたスチレン/アクリル酸n-ブチル共重合体(数平均分子量2700,重量平均分子量6100,多分散度2.3)の解析を2種類の質量分析法を用いて行った.マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)では,分子量約5000までシグナルが観測され,一方でエレクトロスプレーイオン化─イオンモビリティスペクトロメトリー質量分析法(ESI-IMS-MS)では,IMS分布図から4価として観測された分布にm/z 2200付近までシグナルが観測されたことから,分子量約9000まで観測することができた.ESI-IMS-MSから得られた抽出MSスペクトルをKMDプロットにより解析したところ,再結合停止反応により生成したと推測される両末端開始剤由来の共重合組成を,最大分子量7800まで解析することに成功した.これは,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって求められた標準ポリスチレン換算分子量分布の約80% に相当し,ESI-IMS-MSの利用が多分散度の高い合成高分子の解析に有効であることを示すことができた.