要旨 脳卒中の10%を占めるくも膜下出血の主原因である脳動脈瘤の成因,治療に関する研究において使用される脳動脈瘤の動物モデルには,1)動脈に対する直接的な外科処置を用い動脈壁に直接損傷を起こし形成する方法,2)脳動脈瘤形成の原因因子を動物に負荷することにより誘発する方法の2 つがある.後者のモデルでは,組織学的に内弾性板の消失,中膜平滑筋細胞層のヒハク化・消失など,ヒトの脳動脈瘤に類似した所見を有しており,脳動脈瘤の病態解明に有用である.当施設では,ラットの脳動脈瘤誘発モデルに加えて,雌カニクイザルに対して両側卵巣摘出術,片側腎動脈・総頸動脈結紮術を行い,術後より食塩水,コラーゲン結合阻害作用を有する薬剤を投与して作成したモデルを開発中であり,MRI での画像追跡による薬物効果判定を進行中である.脳動脈瘤に対する薬物治療の可能性を含め概説する.