抄録
公共工事などで多く使われてきた緑化樹木においても、生物多様性保全の観点から、遺伝子撹乱を防ぐために種内変異を考慮した植栽をすべき場合があるが、現状として、生産個体の入手経路や起源について、遺伝的側面から把握している例は少ない。そこで本研究では、日本有数の緑化樹木生産地である九州地方で生産されている常緑広葉低木種アオキの起源を倍数性・葉緑体DNA多型解析により把握した。その結果、九州地方で生産に用いられるアオキの74%は九州地方以外に起源を持つことが明らかになった。日本に広く分布し周辺の自然分布域からの入手が比較的容易であるアオキにおいても起源に偏りがあることから、他の緑化樹木種についてもその起源には、さらに地域的な偏りが生じている可能性が考えられる。