東南アジアで急速に拡大している外来早生樹の造林地において,近年キクイムシ類が媒介する萎凋病が確認されており,樹木の枯死現象が東南アジアで拡大することが懸念されている。本研究では,アカシア造林地が拡大しているベトナム中部山岳地域を対象とし,林業を営む住民への聞き取り調査を行い,樹木萎凋病被害の対処法と森林資源利用の関わりについて考察した。その結果,林業を営む住民による薪利用が萎凋病被害の拡大を防ぎ,アカシア林を健全に維持するための機能を果たしている可能性が示唆された。しかし一方で,貨幣経済の浸潤により将来的には,こうした薪利用の習慣が継続されない可能性があることも指摘された。