抄録
日本において,風力発電事業に伴う環境紛争の解決要因についての知見は,いまだ十分ではない。本研究では,計画段階において環境紛争が発生した風力発電事業を対象に,アンケート調査を行い,環境紛争発生およびそれに対する事業者の対応状況を把握した上で,環境紛争の解決要因を分析・考察した。その結果,事業計画の物的な計画変更の有無が環境紛争の解決に影響を及ぼす有力な要因であることが分かった。また,環境紛争が解決した事業では,追加調査の実施・地域便益の供与・運転開始後の問題発生時の運転停止約束などのソフト面の対応も行われていた。さらに,災害が紛争論点となる場合には,解決が困難になる傾向が示された。