日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
NM441の体内動態および臨床成績
青木 信樹甲田 豊高澤 哲也吉川 博子若林 伸人林 静一新田 功小浦方 洋一本間 康夫北村 宣子渡辺 京子
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 44 巻 Supplement1 号 p. 295-304

詳細
抄録

新規プロドラッグ型キノロン系合成抗菌薬NM441の体内動態ならびに臨床成績の検討を行い, 以下の結果を得た。
1) 各種腎機能低下患者および高齢者にNM441 200mgを朝食後30分に経口投与した際のNM394の血中濃度と尿中回収率を測定した。血中濃度のpeakは腎機能障害が高度になるに伴い遅延する傾向を示した。血中濃度の低下も腎機能障害が高度になるに伴い遅延し, 高度障害例で極めて緩徐となった。血中濃度半減期 (T1/2) と血中濃度曲線下面積 (AUC) がそれを裏付けており, T1/2は腎機能軽度障害群9.53時間, 中等度障害群で13.93時間, 高度障害群で33.72時間, 透析患者群で16.96時間で, AUC値はそれぞれ15.00, 18.74, 42.83, 31.94μg・h/mlであった。尿中回収率も腎機能低下に伴い減少し, 高度障害群で顕著であった。Ccr 50ml/min以上の高齢者の血中濃度, 尿中回収率は軽度障害群とほぼ同様であった。
2) 2例の慢性気道感染症例にNM441を300mg, 朝食後30分に内服させ, 1例は血中濃度と吸引痰中濃度 (症例A) を, 1例は血中濃度と喀出痰中濃度 (症例B) を測定した。血中濃度のpeakはいずれも4時間後に得られ, 症例Aは1.86μg/ml, 症例Bが0.78μg/mlで, 喀痰中濃度のpeakは症例Aで6時間後に1.84μg/ml, 症例Bで8時間後に0.22μg/mlであった。
3) 内科領域感染症25例に本剤を使用し, 「有効」 22例, 「無効」 3例の成績であり, 有効率は88.0%であった。分離された起炎菌は9菌種14株でそのうち11株が消失し, 消失率は78.6%であった。副作用は認められず, 臨床検査値の異常変動はGOT・GPTの上昇を1例, GOTの上昇を1例, GPTの上昇を2例, BUNの上昇を2例の計6例に認めたが, いずれも軽度なものであった。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top