日本短角種は岩手県などで飼養されている和牛の一品種であるが,近年は生産頭数が減少しており,消費者ニーズに合った改良が急務である.そこで,今後の改良方針を検討するために,近年の枝肉成績と血統の記録を用いて遺伝的パラメータ,遺伝的趨勢,年当り遺伝的改良量を分析した.遺伝率は肉量に関する形質は中程度であったが,肉質に関する形質は低く,脂肪交雑基準は0.14と過去の報告に比べ低い遺伝率であった.近年の遺伝的趨勢は全体的に上昇傾向であるが,ロース芯面積(LMA)とバラの厚さ(RT)は2000年以降停滞していた.年当り遺伝的改良量は,1990年代まではほとんどの形質で増大傾向であったが,2000年以降はLMA, RT, 皮下脂肪厚(SFT)では明確な傾向が認められなかった.各形質の関係は,LMAとしまり,きめが負の遺伝相関を示し,負の改良方向であるSFTが枝肉重量,RTと正の遺伝相関を示すなど複雑であるため,各形質のバランスを重視した改良が必要であると思われた.