抄録
本研究は,新興再興感染症警戒情報の一助としてハシブトガラスの家畜農場への飛来とその季節変動を検討することを目的とした.1年間,栃木県内に設置した箱わなで捕獲したハシブトガラス265個体に,GPSデータロガーを装着し放鳥した.再捕獲によりGPSデータロガーを回収できた82個体について解析を行った.ハシブトガラスの月ごとの日中移動距離は,4月と9月にピークが見られた.ねぐらは年間を通じてほぼ一定の場所を選んでいるが,4月はねぐらを移動する頻度が高いことが分かった.1,5月そして9月〜12月は,ねぐらの移動距離に対して日中移動距離が有意に長かった.また解析した82個体のうち70個体は家畜農場の滞在が記録され,家畜飼料を利用していることが考えられた.さらに38個体が複数の農場を訪れ,平均は4.3±3.1ヵ所であったことから,ハシブトガラスによる家畜感染症の感染伝搬のリスクが推察された.